磯野佳奈先生 中村望美先生 (2018年9月11日取材 ポケット・クリエイション)
―― 産休、育休、復帰後の時短勤務などを活用して保育士を続けている2人の先生にお話を伺います。まず、これまでの勤務状況を教えてください。
のぞみ先生
保育士になって15年目です。今、子供が2人いて、育休と産休をとらせていただきながら、上の子が小学校1年生、下の子が3歳になりました。
下の子が3歳まで時短勤務でしたが、3歳になって時短がきれたので、フルローテーション勤務にはいっています。朝は早い時は6時50分出勤、夕方は遅い時は7時半までの勤務です。家族の協力を得ることが出来たのでフルローテーションで働いています。
朝、子どもが寝ているときに家を出るのは、最初は戸惑ったんですけど、今は、「行ってらっしゃい!」と3歳の子もニコニコで言ってくれるようになったので、あとは家族にお願いしながら頑張っています。
続けているうちに、「子育てしたからこそ保育が楽しくなった」というか、余計に子どもや親の気持ちがわかるようになって楽しさが広がったというか、大変な中にも楽しさがあるので、こうやって今、保育園で働くことを続けている感じです。
いその先生
私は、わらしべ保育園は2年目なんですけど、その前に、4年半くらい別の保育園で勤めていました。今、上の子が3歳、下の子が8か月で二人とも息子なので、てんやわんやの毎日です。勤務は、朝9時から夕方4時半までの時短勤務です。
―― いその先生がわらしべ保育園で働くようになったきっかけは?
いその先生
別の保育園で働いていたときに、上の子がわらしべ保育園の本園に入園していて、そのときの担任の先生がのぞみ先生だったんです。夏に保育参観があって、給食まで一緒に遊んだりして過ごしていく中で、「この先の勤務をどうしようかなと思っています」って言ったところで、のぞみ先生から「じゃ、第二園ができるから一緒に働きませんか?」というお話をいただいて。そのときは冗談だと思っていたんですけど、先生たちの雰囲気がすごくやさしくて、「こういう保育園で働きたいな」と思いながら息子を抱えていたら、園長先生に「働かない?」って言っていただいたので、「いいんですか?」っていうことで、息子のおかげで第二保育園に勤務させていただけることになって。
―― ご自分の子育てをしながらの勤務はどうですか?
いその先生
時短をいただいているとはいえ、もう怒涛の毎日です。家に帰ってご飯食べさせてお風呂入れて寝かせる…、保護者の方々もこうやって毎日過ごしているんだなと、私も親になってはじめてリアルな大変さがわかるようになってきて、お母さんたちと「こうなんですよ」っていう話ができるようになった自分もいます。そういう話ができる楽しさだったり、自分の子どもとは違う姿を見せる子ども達だったり、やれることがそれぞれで違うというのを発見する楽しさっていうのは、やっぱりこの仕事をやっていて「本当にいいな」とずっと感じている部分です。
―― わらしべ保育園の特色はどんな点にあると感じますか?
いその先生
以前勤めていた保育園と決定的に違うのは、「先生たちがどんな話でも、クラスを超えて話をしている」ことです。ほんとに小さなことでも、「靴がはけるようになった」とか「お兄ちゃんはこうだったけど…」という話を廊下ですれ違った時に「そういえばさ~」みたいに話している。「子どもを園全体でみているな」っていうのは上の子を預けていた頃から感じていて、自分が勤めてみたら「ああ、やっぱりそういう保育園なんだな」って思いました。先生たちが本当に仲いいですよね。
のぞみ先生
前に担任をしていた先生だったらやっぱり子どもの成長を一緒に見たいので、「あ、今日こんなことがね、去年までは出来なかったんだけどできるようになったんだよ」ってちょっとお伝えしたりとか、保育中に「ちょっときてきて!」、隣の部屋だったりとかすると「見て!」「できるようになってるよ、ほら!」みたいな感じで成長を伝えあったりとか。
あとは兄弟がいる場合に「こういう姿だったから、もしかしたら下のお子さんも同じ姿になるかもね」という話も、本当に短い時間ですけど、伝え合うのはけっこう多いかもしれないです。お互いに楽しみながら。
いその先生
事務所にいても園長先生から声かけて下さるので、話しやすい雰囲気が自然とありますよね。
―― 先生同士で子育ての相談をしたりすることも多いですか?
いその先生
しょっちゅうしています。のぞみ先生は上の子の担任だったこともあって、ちょうどイヤイヤ期で、自分が保育士なのにどうしていいかわからないときに、「きいてください、うちの子が…」って言うと、「前、こんなだったのにね」と当時のことを忘れないでいてくれたり、「うちの子はこうだったよ」っていうアドバイスをいただいたりとか。食事のことも、「食べないんです~」とか…。
のぞみ先生
子どもが同じ年なので、悩みをお互いに、「うちもこうだったよ」って言いながら…。
いその先生
同じことを見つけるとちょっとほっとしますよね。「うちも食べない、食べない!」みたいな。
のぞみ先生
家でのモヤモヤは仕事には持ち込まないように、このへんで発散してから保育に改めて気持ちを向けています。
あとは、休憩もとれるように上の先生が動いてくれているので、自分で時間を持てます。私は小学校の(提出書類の)書き物とかをばーって書いたりするんですけど、そういった時間も確保されているのでありがたいなと思って働いています。
―― お子さんの発熱とか、学校からの呼び出しがあったときは?
のぞみ先生
子どもは急に熱がくるので、母の勘じゃないですが「ああ、今日ちょっと怪しいな」と思ったら、出勤したときに「もしかしたら熱が出て(学校から)電話がかかるかもしれないです」と伝えます。電話がこなかったら「よかった、今日は大丈夫だったかな」って思いながら。やっぱり次の日に熱が出てお休みをいただくこともあるんですけど。
熱が出てしまって迎えのお願いの電話がきたときは、「もう、帰ってあげな」って体制を整えてくれます。すぐに勤務表、照らし合わせてくれて、「明日大丈夫だから。今日は安心して帰ってね」って送り出してくれます。
やっぱり「次の日、どうしよう」というのが心配で、今日は家に帰っても、また次の日も熱が下がらなかったら、周囲に負担をかけるなというところがあるんですが、そうやって声かけてもらって帰れるので嬉しいなと思っています。
―― お二人のように、将来、自分も子育てをしながら保育士を続けたいという方も多いと思いますが、仕事のやりがいについて教えてください。
のぞみ先生
保育士になったばかりのころは、保育がどういうものなのか手探りで、3年たってなんとなく見えてきて、5年くらいしてやっと自分の思うように保育がすすむようになってきました。やっぱりそれなりに年数がたってくると、発達だったりいろいろなものがわかってきて楽しく保育が出来るようになってきて、それが今、自分の子育てにも役に立ったなあというのはすごく感じています。
わが子しか見ていなかったら、戸惑うこともきっといっぱいあっただろうなって思うんですけど、保育園でいろんな子どもを見てきているぶん、わが子にも少し気持ちの余裕をもって育児ができたのかなって思います。
子育てしながらの勤務は大変ですけど、それ以上に同じように育児しながら働いている保護者と接することで、保護者のために力になれたことがひとつでもかえってくると「やっててよかったなあ」とか。保護者が子どもに対して前向きになっていく姿だったり、子どもが成長したことを喜んでいる姿を目の当たりにすると「続けててよかったなあ」というのはすごく感じます。
あとは、私立保育園なので、卒園児がたまに遊びに来てくれて大きくなった姿をいつまでも見ることができます。公立だと移動がありますが、私立保育園は大きな移動がないので、卒園児に会えるのを楽しみにしています。
いその先生
私は、わらしべ保育園に勤務して一年目で妊娠しまして、そうするとやっぱり「育休どうしよう…」とか、「産休もどこまでとっていいかな…」っていう不安もあったんですけど、先生たちがみんな「いいよ、無理しないで」っていう言葉をたくさんかけてくれて。体調の悪いときも「大丈夫?」って声をかけてくれて、子どもに対してだけじゃなくて、働く人同士がお互いに気をつかえあえる職場だなってすごく感じていたんですね。だから申し訳ないと思いながらも年度途中でお休みをいただいて、「早く戻りたいな」って思いながら育休を過ごすような生活をして、今やっと戻って来られました。
自分の思った保育を形にしていく楽しさっていうのは、いつも手探りなんですけど、その時々の子どもの反応だったり、お母さんたちお父さんたちと話をしたり、時にはこうやって先輩保育士に悩みをきいてもらったりしながら、前向きに、毎日を本当に全力で保育にあたっていけることが、すごくいい保育園だなっていうのを感じながら働いています。
来春、さくら組さんが卒園して、どんなふうに大きくなっていくのか楽しみにしています。私は乳児クラス担当ですけど、たまに会うと「大きくなっているな」って思ったり、そんなふうに毎日仕事させていただいています。