わらしべ第二保育園の特色
わらしべ保育園(本園)とわらしべ第二保育園は、保育方針は基本的に同じですが、立地(周辺環境)はかなり異なります。
わらしべ第二保育園は、開園してからまだ二年目ですが、日ごろの保育にも特色が現れているのではないかと思います。そのあたりを舩崎園長と山田さやか先生に伺いました。
(聞き手:ポケット・クリエイション)
☆わくわくひろば
――わらしべ第二保育園の最大の特徴のひとつと言えるのが、「わくわく」ですよね。こちらはどういう経緯でできたものですか?
舩崎園長
もともとお向かいの「うらわの里」という老健施設が、利用者のためのお散歩コースにということで借りていた土地です。「うらわの里」さんとは、お年寄りが散歩に出てきたら、子どもたちと交流したらいいですね、という話しをしていました。
ところが、あまり利用者する方がいらっしゃらないということで、地主さんが、「それなら園庭が狭いんだから、園庭として使ったらいい。必要なら木も切るよ」と声をかけてくださり、使わせていただくことになりました。
畑も、わくわく広場も、地域の方に支えていただいていて、本当に感謝しています。
原っぱの中にサーキットがある
――「わくわく広場」でまず目が行くのはサーキット場ですね。
さやか先生
子どもたちは、バイクや三輪車で遊ぶのが大好きです。でも、年齢が違うと出すスピードも違って危ないので、三歳児が「バイクに乗りたい」という場合は、二歳児が先に遊び、それから三歳児が遊ぶというふうに時間差にしています。
――街なかの広場や公園は整地されていることがほとんどですが、わくわく広場は、サーキット以外はまさに原っぱというか、いろんな木が植わっていて、自然に近い感じがしますね。
舩崎園長
私もそのことを一番感じました。秋ヶ瀬公園などは別ですが、整地してコンクリートでかためてしまうと草も生えないし、虫もいない。その点、わくわく広場は自然に花が咲いて、つくしが生えて、虫や鳥たちが遊びにきて、そして果物がなる木がたくさんあります。年間を通して、常に自然と触れ合える点が子どもたちの成長にとっても素晴らしい環境だと思っています。
子どもたちは、広場の管理をしてくれている尾崎さんにいろいろ教えてもらいながら遊んでいます。
最近の話題は「もぐらに会いたい」
さやか先生
散歩がてら近くの公園で遊ぶこともありますけど、「わくわくひろば」で遊ぶことのほうが多いですね。今、子どもたちの話題の中心は「もぐら」です。もぐらが通って土が盛り上がっているのを子どもたちが見つけて、もぐら探しに夢中になっています。さっきも二歳児が管理の尾崎さんと一緒に、広場に植わっている「ひめりんご」の実をとってきて、「これを餌にしてみよう」と試していました。どうしても、もぐらの顔を見てみたいんでしょうね(笑)
もぐらをさがしている様子
舩崎園長
明日そのヒメリンゴがなくなっていたら、二歳児もびっくりするでしょうね(笑)
草をむしれば虫もたくさんいます。ダンゴムシとかかわいいのだけじゃなくて、ゲジゲジなんかもいます。ゲジゲジは自分からは悪さはしないで逃げていきますが、子どもたちは触りたいという気持ちはあるようです。それはもちろん「触るとかゆくなるよ」と伝えていますから、みんな見ているだけです。
指を一本立てて、トンボがとまるのをじっと待っている子どもの姿を見ていると、ほほえましく、こちらも童心にかえるようです。
一年を通してさまざまな果実を収穫できる
――ひめりんごの話が出ましたが、広場にはいろんな果物の木が植わっていますね。
舩崎園長
びっくりするくらいいろんな実がなります。ブドウ棚には、この夏、ブドウがたくさんなって、すごく甘い香りがしたんです。尾崎さんに聞くと「これは食べたことないよ」って言うんですが、「こんなにいい香りがするのなら食べられるんじゃないか?」ということで食べてみたら、すごく甘くておいしかった!わらしべ本園の子どもたちとも一緒にみんなでおいしく食べました。
さやか先生
あとは、夏場だとナシですね。袋をかけて育ててみましたがカラスが全部落としていきました。ビワもイチジクもおいしかったですが鳥に狙われて、さくらんぼも赤く熟してきて「そろそろ収穫しよう」と思っていたら一晩で、小鳥にぜんぶ食べられていました(笑)。収穫時期は、子どもたちと鳥との競争です(笑)
舩崎園長
秋から冬は、ミカン、柚子、柿、栗・・・。柚子も結構採りましたが、ミカンも豊作で今日も子どもたちがミカン狩りを楽しみました。
ヒメリンゴは食べられませんね。春はタケノコも採れます。
さやか先生
隅のほうに畑をつくって、今年はさつまいもを植えてみました。そこは二十数年間、何もしてこなかった土地ときいていたので、まったく期待しないで土地を耕して植えてみたんですが、予想以上にたくさんのさつまいもを収穫できました。そのさつまいもは一人一本、持って帰ってもらいました。草むしりは子どもたちがやってくれたんですよ。
さつまいものつるがとても立派だったので、それでリースを作って、今は玄関の受付の前に飾ってあります。
わくわく広場で収穫した果物もおいしくいただく
――園内にこれだけの果物がなって、収穫できて、しかも食べておいしいという環境は本当に珍しいですね!子どもたちには給食のメニューとして出すこともあるんですか?
舩崎園長
春のタケノコは、給食の吉野先生が工夫して味噌汁にしてくれました。イチジクはジャムにしてパンケーキに混ぜて焼いて食べました。甘柿は白和えに入れたり、おやつに出たり。
子どもによって好き嫌いはありますが、おいしいという声が多かったです。
渋柿は、来年時間があれば本格的に干し柿に挑戦しようと盛り上がっています。
給食の吉野先生は、自分でヨモギをプランターで育てて、ヨモギパンをつくってくれたり。
来年以降も本当に楽しみです。
遊具だけではなく、自然を生かした遊びを
――今日は、木登りをしているお子さんもみかけました。
舩崎園長
管理の尾崎さんに木の状態を確認してもらって、大丈夫なものにはテープを貼ってわかるようにしてもらっています。先生に見守られながら、子どもたちは木登りを楽しんでいます。
あとは、広場の一角に、もともと田んぼをつくろうと思って穴を掘ってもらった場所があるんです。ところが、建設用の重機で掘ってもらったら想定よりかなり深くなってしまった。そこに今後、落ち葉を集めて、「落ち葉のプール」にして遊んだらどうか?とか、私たちもどんどん夢も広がっているという状況です。
さやか先生
あとは、桜の木が立派で、花見の時期はほんとうにすごい花が咲くんです。
舩崎園長
ちょうど入園式の頃には、花桃。1本の木なのに紅白の花が咲くんです。それもとてもきれいです。
秋のイベント ファミリーデイ
@わくわくひろば
――この「わくわくひろば」で、10月に「ファミリーデイ」というイベントを開催されましたが、どういうイベントですか?
舩崎園長
ファミリーデイは、運動会とお遊戯会を一緒にしたようなイベントで、保護者・ご家族には子どもたち一人ひとりの成長を感じてほしいというのが目的です。
去年は、園庭の遊具を使うことを前提にしていましたが、雨だったので屋内で行いました。わくわく広場で開催するのは今年が初めてだったんですが、とても盛り上がりました。
子どもたち一人ひとりの成長を見てほしい
――具体的にはどんなことをして楽しんだのですか?
さやか先生
まず、「ミニ運動会」。これは、運動遊びが中心で、競争はしません。サーキットの中で、みんなが踊れるダンスを踊ったり、「できるかな体操」(絵本の体操)をやったり。
あとは、各クラスごとに、バイクに乗っているところを見せたり。「よーい、ドン」でスタートしてトンネルをくぐってゴールに向かうんですが、レースではないので、先にトンネルをくぐった子があとから来る子を待っていたり、かまわずどんどん走る子がいたり…。
舩崎園長
去年までは、泣きだして何もできなかった子が、今年は親から離れて先生と一緒に歩いているのを見て感動してくれたり…。
保護者の皆さんには、お子さんができなくても、できる子と比較するのではなく、「去年はこうだったのに、今年はこんなことができるようになったね」とか、「こないだまで嫌がっていたのに、今日は笑顔でやっていたね」とか、そういう成長を見てほしいといつも伝えています。
今回も、いつもの自然な子どもたちの様子を通して、一人ひとりの個性、成長した姿を、ほほえましく見守ってくれていました。
さやか先生
かけっこもしました。でもゴールテープではなくて、保護者が待っているんです。子どもたちは一生懸命走って、お母さんお父さんの胸に飛び込んでいきます。
中には、子どもが親ではなくおじいちゃんを指名して、指名されたおじいちゃんが照れくさそうに出てくるとか、89歳のおばあちゃんがゴールで待っていたりとか。そんなお歳には見えなかったのでどうぞとすすめたのですが。そんな一幕もあって、全体的にほのぼのとした雰囲気でしたね。
舩崎園長
競争(競走)は、小学生になればいやでもやりますし、自然にやりたい年齢がやってくるものだと思います。当園は、5歳児も5人しかいないので、あえて競争はいれていません。
もちろん、リレーなど「負けて悔しい経験も大切だ」という考えも理解できます。でも、「走っている姿がたくましくなったね」とか「力強くなった」ということを、ゴールでお子さんを受け止めた親御さんが体感することも、今しかできない貴重な瞬間ではないかと思います。
さやか先生
玉入れもゼロ歳から年長まで全員がやりました。1歳児、2歳児は先生がしょった籠を追いかけて入れる、3歳児は親子一緒に「チェッチェコリ」を踊って、ピーという合図で保護者が持ち上げてあげて玉を入れる。4,5歳児は、「親 対 子ども」。高さに差をつけたんですが、お父さんたちが張り切ってダンクシュートみたいにして入れはじめてしまいました(笑)それを阻止しようと、2人の先生が籠を持ち上げる、するとユラユラ揺れてなかなか入らない。それでまたお父さんは夢中になる…という具合に盛り上がりました。
それでも結果は親チームが圧倒的に多かったのですが、今度は先生が親チームだけ2個ずつカウントする(笑)。最終的に2個差で子どもチームが勝って、「イエー!」「やったー!」と全身でガッツポーズをする。それを見て、保護者が大きな拍手をする、という感じで、子どもも親も先生も一緒になって、感動あり笑いありという、ほのぼのとしたイベントになりましたね。
舩崎園長
小学校に行けば否応なしに順位が付けられていきます。「保育園時代は楽しかったね」「みんな頑張ったね」というのがいいと思っていて、そこを大事にしていきたいと思っています。
――わくわく広場という、日ごろ遊んでいる場所だから生まれる雰囲気、会話もあったでしょうね。
舩崎園長
園庭には子供達が描いた顔の画を万国旗代わりに飾りました。保護者もわくわく広場に入る機会がなかなかないので、その良さも実感してくれたようです。
「草取り、喜んでやります!」と言ってくれた親御さんもいましたし、「よくがんばったね」とほめられた子供が、「これは先生たちが草取りとか、危なくないようによけてくれているからだよ」と親に説明している光景があって、これには私たちも感動して泣きそうになりました(笑)。
まだまだ始めたばかりなので、いろいろと工夫をしたり、保護者の力も借りたりしながら、より楽しいイベントにしていきたいと思います。
☆園庭の遊具
――園庭の遊具は、大きなものですね。子どもたちも夢中になって遊んでいました。
舩崎園長
はしご、のぼり棒、ロープでできた橋…、身体のいろんな部分を使って遊ぶことができる遊具です。子どもたちには「自分のペースで遊んでね」と言っています。無理に乗せると落ちてけがをすることが多いものです。子どもは「自分の身体でどこまでいけるか」を、身を以て体験することで、少しずつ力をつけていきます。のぼり棒も、自分でのぼっていくから「これで無理…」と思えばそこで降りてきます。
子ども自身のペースで遊ばせる
さやか先生
ロープ橋はかなり揺れるので、体幹がしっかりしていないとずりおちてしまいます。こちらとしては「体幹をきたえてもらいたいな」と思いますが、「絶対無理」と思う子はいかないですし。それぞれ自分のペースでチャレンジするように伝えています。
――遊具の横に、大きな砂山がありますね。
舩崎園長
あれも同じで、砂山に登ったことのない子が、雨が降って山が少し低くなってきたら登ろうとするようになったり…。子どもはよく見ているんだなあ、と思います。
さやか先生
雨が降って削れてくると低い年齢の子もやりはじめる。大きい子が登ると足のでこぼこができるので、それを頼りに低い年齢の子が登るんですが、それをまたきれいにならして、簡単に登れないようにしてみたり(笑)。だから、「こないだはこっちから登れたのにぃ…」と思っているかもしれません。こないだと今日は違うよという感じで、自然の砂山登山を体験している感じですね。
舩崎園長
自然のものは変わるのがいいですよね。「こないだの形のほうが良かった!」と思う子がいるかもしれない。でも、雨のあとはぎゅっと固まったり、晴天が続けば乾いてスルスルとなったり。二度と同じ形はないですから。
――こないだは雨のあとの取材でしたが、泥んこ遊びも楽しそうでした。
舩崎園長
ゴロゴロ転がって、真っ黒になった子が、「バイ菌だぞ。みんなの口の中に入って虫歯にしてやるぞ~」とか(笑)そういう発想も面白いです。
環境が違えば、子どもたちの感じ方、成長も変わってきます。この貴重な環境を大切にして、自然と触れ合いながら、自分のペースで遊んで、少しずつ体力をつけて、感性・個性を育んでもらいたいと思っています。
給食・食育・野菜づくり
ガラス張りの給食室だから会話が生まれる
――わらしべ第二保育園の給食室は建物のほぼ中央に位置していますね。そして、園児が給食を食べる多目的スペース(ランチルーム)からガラス張りになっていて、中を見渡せるようになっています。
舩崎園長
食欲旺盛な子どもたちは中を覗き込んで「今日のおかずは何?」ってきいたりしています。写真も貼ってあるので、楽しみに見ていますね。
さやか先生
食事が終わって片付けるときも、給食の先生と「今日の○○はおいしかったよ」とか「今度はこういうのをつくってね」と会話を交わしています。
舩崎園長
給食の先生も子どもたちの素直な感想や反応を聞けるのを楽しみにしています。「今日の○○、すごくおいしかった!」と言われると、「作るのは大変だったけど、また作ろう」という気持ちになるそうです。
子どもたちは給食の先生の名前も、一人ひとり覚えています。
畑の野菜を自分たちで収穫して食べる
――近所の畑で一年を通していろんな野菜をつくっていますね。畑を借りることになった経緯について教えてください。
舩崎園長
わらしべ保育園(本園)でもお隣の方のご厚意で、畑を借りて野菜を栽培していました。第二園ができるときに地主さんに相談し、現在の畑を貸していただけることになりました。最初は私たち(先生)だけで畑を耕していたんですが、やはりそこはやっぱり素人で、うまくいかない。そしたら近所のおじいちゃんが見るに見かねて声をかけてくれて、手伝っていただけることになったんです。
それからはそのおじいちゃんのご指導のもと、子どもたちと一緒に野菜を作っています。
さやか先生
土の作り方に始まって、「種、買ってきたか?そろそろ蒔いていいぞ」とか、肥料はどうするとか、「今の段階で除草剤をまくけど、収穫何か月前からはまいちゃいけないぞ」とか。いろいろ教わりながらやっています。
舩崎園長
「早く抜かないとどんどん大きくなるぞ」と言われて、子どもたちと一緒に収穫に行ったり。 子どもたちも、「大きなカブ」の話ではないですが、喜んで抜いてきますね。
――これまでにどんな野菜を作ったのですか?
さやか先生
夏は・・・秋は・・・(にんじん、はくさい、キャベツ、キュウリ、ブロッコリー、大根、ホウレンソウ…)
――ずいぶん種類が多いですね。収穫はどのように?
さやか先生
子どもたちとワイワイ言いながら収穫しています。
――収穫した野菜はどうしているのですか?
舩崎園長
カブがたくさん採れたときは、糠漬けにしました。給食の先生とも相談して、乳酸菌が豊富なので子どもたちにもいいのではないかということで作ってみたんですが、意外に子どもたちに好評で、最初は嫌がっていた子もだんだん食べるようになりました。ほかにも、ごぼう、しいたけ、セロリ、切り干し、いろんなものを糠漬けにして、給食とかおやつの時間に食べています。
お隣のしいたけ栽培企業との交流
――わらしべ第二保育園のお隣には、しいたけを栽培している施設(アスタネ http://www.asutane.jp/)がありますね。そちらとも交流があるとか。
舩崎園長
隣のしいたけやさんには、収穫体験もさせていただいています。小さいうちはしいたけが苦手な子どもが多いじゃないですか。でも、自分でそういう場所に行って、自分の手で収穫しているうちに、食べるようになってくる子どもも増えてきたんです!
給食の先生ともメニューの相談をして、「しいたけとヒキ肉と炒めもの」を作ってみたら、みんな食べるようになりました。
それ以来、普段からお隣から小さいしいたけを買ってきて、給食のメニューに取り入れています。
さやか先生
畑もしいたけもそうですが、自分が関わることで、「この野菜は○○だ」というのがわかるようになってきますね。「まだ青いから、もう少し赤くなってから食べよう」とか。そうやって、素材自体を知ることで、少しずつ食べるようになっていきますね。
舩崎園長
私たちもそうですが、スーパーや八百屋さんに並んでいるのと畑でなっているのは、見た目にも違うじゃないですか。最初はホウレンソウがどれなのか、わからないくらいでした。そういう意味でも、畑の野菜と触れ合う機会は大切なことなんだなと感じています。
子どもたちも、最初の頃は好き勝手に畑の中を歩いていましたが、今は、野菜たちを思いやるような感じで歩いていますね。
――来年になるとまた新しい遊びや活動が増えていることでしょうね。ありがとうございました。